2016.09.03
ファブラボ北加賀屋番頭の森本です。
今回は私が取り組んでいる「プログラ民具」をご紹介します。
■開発の背景
ー「デジタルファブリケーション」や「ファブラボ(ファブスペース)」、そしてそれらを繋ぐ「ネットワーク(インターネット)」で何ができるのか、具体的に作ったモノを通して語れるようになりたい。
ー「MAKERS」をはじめ、FAB関係の書籍や会合の中で提唱されている様々なコンセプトや可能性が、具体的にどういうことなのか実践してみたい。
ーそして、それらが現実的なのか?有益なのか?あるいは楽しいのか?、実感を持って評価したい。
そんな事をぼんやり考えながら始めたのが「プログラ民具」というシリーズです。
■プログラ民具の概要
「物質がプログラマブルになる」、「デジタルとフィジカルがシームレスに繋がっていく」、「ソフトウェアで起きたことがハードウェアでも起こる」、あたりのキーワードを具体化しようと思い開発をスタート。その後、曲解、拡大解釈、単純化を繰り返し、「プログラ民具」に辿り着きました。
文字通り「プログラミング」とかけたものですが、拝借した要素は以下の3点。
①文法(=ソフトの使い方)を学べば、自分で一から好きなものが作れる。
②よく使う機能はモジュール化されており、呼び出して利用できる。
③改変可能なデータがオープンに流通している。
機能を持ったコアモジュール(データやパーツ)に、自身で製作したカスタムパーツを組み合わせることで、好みや使用環境に合わせることができ、かつ破損したり、使用環境が変わったりしても、一部を改変、修復することで使い続けられるプロダクトを目指しています。
なお、日々の生活で活用できるか評価するため日用品を作ることにしました。
データは元々123D Designで作ったものを現在Fusion 360で置き換えているところですが、以前からの課題だった③の可変させられる状態でのデータ公開の部分はまだできていません。
「プログラミング」に近いイメージとして、ファブラボ浜松の竹村さんに教えてもらった、OpenSCAD + Thingiverse Customizerがいいかなと思いつつ、ソフトの普及状況からFusion360の共有機能使った方がいいかなとかモゾモゾ考えながら、ずっと放置してしまっています。
いいアイデアあれば教えてください。
<※2017.4.1追記>
OpenSCADを使ったプログラマブル化の実験です。
moduleを組み合わせてプロダクトを作ることができます。
module内の数値をイジってサイズを変えることができます。
■プログラ民具//テープカッター
最初に選んだ製品はテープカッター。当時テープカッターが必要だったことと、機能ごとに分解しやすかったことが理由です。
<コアモジュール>
//mod cut(tape) 切る(テープ用)
汎用パーツといいながら、だいぶテープカッターに寄っています。レゴのように繋げることで幅を変えることができます。刃は3Dで作成できなかったので、レーザーカッターで作り、溝に挿し込んでいます。ただ、その1mmの溝がFDMでは出せなかったので、DMM.makeに出力オーダーしました。このように、出力する機材を選ぶデータの場合、公開する際に注意が必要かなと思いました。
//mod rotate 回す
ベアリングに軸をねじ込んで回る仕組み。テープカッターにベアリングを使うという贅沢なことが発生してしまいますが、おかげでテープを引き出す作業が気持ちいいです。
//mod attach ring 指に付ける
自分の指のサイズに合わせて可変できます。
//mod attach cramp クランプする
幅、高さ等可変できます。
//base
ブロックのように繋げられるようにするために、各パーツには凸の部分、もしくはそれを受ける部分が必要になります。
しかし、出力の際、凹の部分にサポート材が入ると、あとでヤヤコシイことになってしまいます。
そのため、本当は凹にしたいところも凸にして、アタッチメントパーツで調整するようにしました。
<バリエーション>
//Single/double
サイズ変えられますよーという話。mod cut、mod rotateがハマる部分さえ残せば、好きなデザインで外装を作れます。
//Wearable
体に装着することができるようにしたもの。脚立に乗りながら高所のテープ貼り作業を連続で行うというニッチな場面を想定。いちいちテープをポケットに入れなくて済むかなーと思ったのですが、残念ながら、左手の親指と人差し指の付け根あたりがツりそうになります。
//Cramp
回転部とカットを分離し、それぞれをテーブルなどに固定して使えるテープカッター。これは場合によっては使い道がある気がします。
作りながら思ったのは、回す機能(軸)と切る機能さえあれば、テープカッターとして成立するということ。
機能ごとに分解し、必要な機能だけ見つめることで、「〇〇はこういう形」という先入観から抜け出すことができたり、既存の商品カテゴリーにはない「〇〇を△△する道具」としか言えないような、新しいアイテムが生まれたりするのではないかと思っています。
■さいごに
現状テープカッター作るためのパーツ群みたいな感じになっていますが、本来はこれらのコアパーツをテープカッター以外のアイテムに展開していかないといけないですし、コアパーツ自体ももっと増やす必要があります。(と、一年前にも言ってた)
そんな中途半端な状況なので、このコンセプトが現実的なのか、有益なのか判断することはできないのですが、メイカーズバザールなどに出展した際の反応を見ると、どうやら楽しいのではないかと思っています。
ということで、これからも開発を進め、公開できるところまで持っていきたいと思っています。(できればいろんな人と一緒に!)
それでは!