期間限定!ファブラボ小豆島(七日目、最終日)

2014.12.22

こんにちは!七日目最終日担当の吉岡 華乃子です。

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私はこのレポートの三日目を担当した吉岡と夫婦2人でアナログゲームの制作を趣味としています。ファブラボ北加賀屋にはゲーム作りでの機材利用のために会員となり、もっといろいろな機材を使えるようになりたいという思いから、今年の春よりボランティアスタッフである番頭になり、運営にも少し関わらせてもらっています。

 

今回小豆島の話を聞き、地元の方と話しをしながらファブラボについて考えるという機会に興味を持ちメンバーに手を挙げたところ、初めて入ったミーティングで思いがけず「吉岡さんが来るなら最後のワークショップはボードゲームを作りましょう」というお話を頂きました。

現地に入ってリサーチをしながら1週間でゲームを作り、ワークショップでそれを現地の方にお返しする。

返したゲームによって、小豆島のことやファブラボのこと、ものを作ることを考えるきっかけを作る。

これは私たちにとってとてもチャレンジングな試みでしたが、同時にとてもワクワクするものでした。

 

七日目、最終日のレポートは私たちの1週間でのゲーム制作と当日のワークショップの様子を紹介します。

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【1~3日目:インプット期間】

これまでのレポートにあるように、小豆島に入ってからの3日間は初日の「Theater」に始まり、2日目には池田小学校でのワークショップ、3日目は怒濤の小豆島散策、平行して2日目からは毎晩Barを開くという過密スケジュールでした。この3日間私たちはいろいろな場所に行き、たくさんの方にお会いしてお話をさせて頂きました。

その中でひとつ感じたのは、この地域の方には「食」に関する感度の高い方が多いということでした。Barでの話題もオリーブの新漬けが爪楊枝で食べにくい話から、最近の釣果の話、お仕事で関わる佃煮やおうどんの話など、食に関する産業の多い土地柄もあるようでした。

また今回の滞在中ファブラボ北加賀屋のメンバーには、島を巡ってファブラボをPRしながら島のことについて情報を集めつつ、その日のBarの料理と自分たちのごはんの食材入手を目指す「クエスト」をするというテーマがありました。その先には「食」と「デジタルファブリケーション」との可能性を見い出すという目標もあります。

タイトな時間の中食事の準備には悩まされながらも、いろいろな方の「食べだすけ」に支えられた生活となり、「食」は私自身にとっても大きな関心事のひとつとなっていました。

 

最初の3日間はゆっくりゲームを考える時間はありませんでしたが、小豆島についての膨大な情報が知識としてだけでなく、体感として入ってきた3日間でした。 

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【4~6日目:アウトプット期間】

4日目からはこれまで見聞きしたものをゲームに落とし込んでいく製作期間に入ります。 まずは小豆島の何をテーマとしたゲームにするかを考えます。

その中でも「食」に関するキーワードはいくつか出ていました。

途中から向井さんも入って下さったので、ずっと気になっていた小豆島にはどんなお料理があるのかをうかがうと、ご近所にお住まいで向井さんの料理のお師匠さんである、みっちゃんことみちこさんを連れてきてくれました。みちこさんには小豆島特有のお料理についてのお話をいろいろとうかがいました。

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みちこさんのお話にはたくさんのお料理とそれにまつわるたくさんの食材の情報がありました。お料理はどれも美味しそうで、食べてみたいものばかり。

みちこさんのお話から、私たちの中でぼんやりしていた「食」というテーマは、小豆島をぐるぐる回って食材を集めて、小豆島のごはんを作るゲームというはっきりとしたイメージになっていきました。

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そこからは時間との戦いです。ゲームの仕組みやルールを作る担当と、ゲームで使う道具を作る担当に分かれ、平行して作業を進めました。

ありがたいことに、エリエス荘にあった小豆島型の卓球台(京都造形芸術大学ウルトラファクトリーのBY EDITというプロジェクトで2013に作られたもの)をゲームのボードとして使わせて頂けることになり、ゲームの中に出てくる料理や食材のイラストは、小豆島町役場の小西さんに描いて頂けることになりました。ファブラボ北加賀屋メンバーや向井さんにもゲームのテストプレイにつきあってもらうなど、様々な面でバックアップして頂きました。

レーザー加工機の不調や深夜までの作業などを経て、6日目の夕方、ゲームはなんとか完成しました。

いろいろな方に支えられて、一緒に作ってもらったゲームとなりました。

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【7日目:ワークショップ 小豆島を題材としたボードゲーム】

いよいよワークショップ当日です。午前中は機材や備品を会場のeiに運び込みます。

準備ができた後は、予行練習でゲームのテストプレイを行います。このテストプレイには会場にいらっしゃった「んごんごクラブ」の方にも入って頂きました。「んごんごくらぶ」は協働の街づくり団体で、地域のシニア層のメンバーがボランティアで観光案内をされたり、地域活性に向けた様々な活動をされているそうです。(ちなみに「んごんご」はこの地域での蝉の幼虫の呼び名です。)普段私たちのゲームを遊んで頂く機会があまりない年代の方に遊んで頂けたことは、とても貴重なありがたい機会でした。

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そして午後からワークショップ開始です!お子さんやそのお父さんお母さん、大人の方や、喫茶「白鳥」を運営されている香川大学の学生の方も参加して下さいました。

 

ワークショップは二部構成です。

一部:「作る」 ゲームに使うコマを、みんなで描いてレーザー加工機で作ります。

二部:「遊ぶ」 作った自分のコマでゲームを遊びます。

 

まずは一部の「作る」。

紙に自分の頭から足までの自画像を描きます。描いた自画像はスキャンして加工します。そのデータをレーザー加工機に送りレーザースタート!自画像をレーザーで木に刻印して、コマの形に切り出します。

みんなでかわるがわる、レーザー加工機の中で自分の描いた自画像が刻印されていくのをのぞいていました。

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そして二部は「遊ぶ」。

最終的に出来上がったゲームは「小豆島ごはんクエスト」というゲームです。

このゲームはサイコロを振って小豆島型のボードの中を進みながら食材を集めていき、小豆島のごはんをつくるというゲームです。10種類ある小豆島のごはんは、必要な食材の数が点数になっています。誰よりも早くごはんを作って、7点先取した人が勝ちです。

着いた所に他の人がいたら食材を1つ交換しなければならなかったり、サイコロの目で「みんなで交換」が出ると全員持っている食材を1つ左隣に渡さなければならなかったりと、思いがけない食材交換がおこります。

小さなお子さんから、大人の方まで6名で遊んでもらいました。

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大きなサイコロを振って、みんなで小豆島のボードの上をコマであちらこちらに動きます。 なかなか決着がつかずちょっと長引いてしまいましたが、最後男の子が7点先取で勝利! 終わった後は勝てなかった男の子が悔しがってすねてしまう一面も。 一生懸命遊んでくれてありがとう。また一緒に遊んでね。

この後大人だけでもう1ゲームしながら、ゲームについての意見をもらいました。

こうしてボードゲームのワークショップは無事終了しました。

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夜は地元の方がエリエス荘でイノシシの肉で牡丹鍋を作ってくださり、んごんごクラブの方も来て頂いて一緒に打ち上げをさせてもらいました。

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ゲームの感想を頂いたり、んごんごクラブのお話をうかがったりと楽しい時間を過ごさせてもらいました。

そうして私たちの小豆島での1週間は終わりを迎えました。

 

【期間限定ファブラボ小豆島での1週間を終えて】

まずゲームの滞在制作について。

時間的にはタイトでしたが、ただ観光に来たのではなかなかお会いできなかった方々とのたくさんの出会いの中から、今回の状況でなければできなかったゲームを作ることができたと思います。

興味深かったのは「小豆島ごはんクエスト」は置いてあるだけでも、いろいろな方(特に女性の方)に話しかけて頂けたことです。地元の方にはそこからお料理やそれぞれの土地についてのお話を聞くことができ、観光で来られた方には小豆島のお料理や地理を紹介するきっかけとなりました。それはガイドブックやWebでの情報とは異なり、手に取って動かして遊ぶゲームのコンポーネントが持つ魅力ならではの効果かもしれません。

まだゲームが出来上がっていなかったり、時間の制約があったりで、声をかけてもらったお母さん方にゲームを遊んでもらうことはできませんでしたが、「食」というその土地に合ったテーマと「地図」から広がるイメージの力も借りると、ボードゲームは自然なコミュニケーションやヒアリングを促すツールになる可能性を感じました。

 

そして期間限定のファブラボ小豆島。

Fab Barは最終日の土曜を除いては毎日盛況で、お話の中からいろいろなものづくりの可能性も見えました。地域にファブラボのある状況も体感して頂けたのではないでしょうか。

ファブラボは日本各地で運営形態が違うように、ものを作りたい人達がその土地にあった形で生み出して、育てていくものだと思います。

ファブラボを体験した小豆島で、新たなものづくりの芽が生まれ、育っていくことを陰ながら応援しつつ、今後も機会があればまたぜひ関わらせて頂きたいと思います。

 

最後に、島でお会いした方々は私たちメンバーを温かく受け入れてくださり、とくにFab Barでは多くの方と実験的でクリエイティブな場を共有できました。これは今回の仕掛人、地域おこし協力隊の向井さんが島に移住をされ積み重ねてこられた地域の方とのつながりが生み出した状況だったと感じます。

たくさんの素敵な出会いをありがとうございました!

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Photo : Koichi Shiraishi

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Rie Mochizuki

Hidetoshi Yoshioka

Kanoko Yoshioka