【番頭リレーブログ#5】勉強できる環境づくり

2016.07.09

ファブラボ北加賀屋で電子工作チーム えんや(演磁日亜長屋)発起人の阪本です。
私が電子工作チームを作るに至った経緯を少しお話させていただきます。

 

「身近に勉強できるところが無かった!!」

電子工作をしていてLEDがピカピカ光らせたり電子音を鳴らすだけでも結構楽しいものです。
身近なArduino(アルドゥイーノ)などのマイコンを使えば簡単にモーターを制御できてミニカーを前後左右と思いのまま好きな方向へ動かすことができます。
しかし最初に最大の壁が立ちはだかります・・・

 

「これは、やっとれん!!」

私はマイコンやプログラムを使う仕事ではないのでArduinoを使おうと思うと全て独学で勉強をせざるを得ませんでした。もちろん東京秋葉原では多くのセミナーが開催されているのですが交通費だけでもバカになりません、受講料と宿泊費を合わせて5~6万なんてザラというのが多くありました。

 

「3Dプリンターを探して東へ西へ」

そんな中、4年前の2012年に空前の3Dプリンターブームが起こります。熱溶解式のFDM-3Dプリンターが価格破壊をおこし手の届きそうな製品の情報が溢れだしました。目新しい物好きの私にとってはとにかく造形してるところを見てみたい、そんな思いで西へ東へ奔走する日々が続きます。
以前、機械設計をしていましたが製図はドラフターというなんともアナログな作業台で作図をしておりました。3Dプリンターを使うには「3DCADをマスターしないと何も作れない!!」と知ると123D-CADのセミナーが岡山であると聞きつけては新幹線で向かった記憶が今もあります。

 

「ファブラボとの出会い」

その頃ふとホームページを検索してると大阪で3Dプリンターを見れる場所がある!!しかもそれが家の近所、「ファブラボ北加賀屋」でした。”灯台下暗し”とは正にこのことです。

そこからは普通の会員さんとしてもの作りをしていました。
まだ電子工作はもっぱら会員さん同士での会話であった様に思います。

 

「誰もが簡単に電子工作が出来る場所を!!」

しかし色々と会員さん同士でお話をしていると非常に詳しい方が沢山いらっしゃいました、お仕事で使われてる方や趣味の方でも数段私より詳しい情報が飛び交います。そうこうしてるうちに当初の目的の「関西で勉強できる場が欲しい」そんな本音を吐露しました。すると皆さんが「いいんじゃない?!作りましょう!!」と力を貸してくれる源流の流れができます。当初の構想から4年ほどが経った2015年2月に何とか”えんや”をスタートさせることが出来ました。
現在はハード&ソフトに強いメンバーとともに分りやすいワークショップや資料の作成を試行錯誤で作っています。ワークショップの回数も十数回を迎えることができました、これからも初心者の方に解りやすい勉強会やワークショップが開催できればと思っております。

 

古い空気感があるものへの興味

実は電子工作チームで活動をしてると、とにかく最新のものばかり追っていると思われてしますのですが実は古い建物や寂れたものに興味が引かれます。リノベーションされた古民家を見学してることが多いでしょうか。演磁日亜長屋の長屋はファブラボ自体が長屋であると同時に古い長屋の風情を見てまわるのが好きなのでこのチーム名に入れています。

 

作品のご紹介

それでは最近の作品から紹介させていただきます。

 

「いまどこ」

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スチームパンク風な真鍮のフレームと最近流行のIoTを融合させてみました。
ちなみにIoTとはインターネット・オブ・シングスの略で物とインターネットを接続させて、人が物をモニタリングやコントロールを可能にするといった意味があります。
「いまどこ」はご家族で手軽に使えるコミュニケーション・ガジェットをテーマに作りました。例えばご主人が帰宅時にスマートフォンのアプリボタンを押すと「いまどこ」のLEDが点り出します。
ご自宅にいる奥さんがポンっと「いまどこ」の金属スレームを触れると主人のスマートフォンに簡単なメッセージを自動返信すことができます、なので手が濡れていても大丈夫なわけです。
その他にも温度センサーを搭載しているので遠くからお部屋の温度を確認して先にエアコンのスイッチを入れるなんてことも・・・・こんな便利なIoTも最近は簡単に作れるようになってきています。

 

 

「ノスタルジック・ランプ」

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昨年2015年のメイカーズ・バザールの作品です。
ワインボトルの底をカットし中にフェラメント型のLEDを入れました。
螺旋階段を下りる様に徐々に点灯させています、是非YouTubeをご覧ください。

苦労した点はこのLEDが高圧の80V付近で点灯するので小さな回路で12本を制御するのが少し難しかったですね。

 

 

「Nixie Tube Collection」

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今年のバザール向けの作品です。
レトロでモダンなニキシー管という表示電球を使った作品です、でも作品というよりは基板そのものですが、何か?!w
最近はLEDが主流になってしまいすっかりニキシー管を見かけることが少なくなりました、でも灯すとこんなに暖かな感じで光ます。
7月9日10日ATCの会場でお待ちしております。是非、遊びに来てくださいね。

 

 

 

 

 

最後に・・・

ファブラボでは皆でわいわいと話しながら分らない事が相談できますので一度足をお運びください。
えんやも初心者向けのワークショップを色々と開催していきます、下記のFacebookよりご登録お願いいたします。

えんや(演磁日亜長屋)Facebookグループ

【番頭リレーブログ#4】CNCでものづくり

2016.07.01

番頭の兒島です。 本業は木工、展示会専門の大工職をやっています。角材とベニヤでいろんな形のものを作るのが仕事なんですが、今までで難しかったものの中から二つ、紹介させてください。前の職場でCNCルータ導入後3ヶ月ほど後の、連続した製作物です。

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まずは1300パイの透明アクリルの案内看板を載せる台座です(使用した材料はコンパネt12、ラワン曲げベニヤt3、芯材24*45。ちなみに曲げベニヤとは、通常のベニヤは単板の木目方向を縦横相互に積層しているのを、一方向だけにして曲がりやすくしたものです。)楕円であるだけで面倒な上、円柱の斜め切り形状は、木工で作るには難物です。

 

円柱は天地をコンパネで、切った丸に角材で縦に桟をいれ、ベニヤを貼ってつくる。そんなに難しくありません。(ベニヤを貼る、と言うのは、木工ボンドを塗った上でエアタッカー(コンプレッサー駆動の二股釘打ち機)で固定することです。) ところが斜め切り形状にするためには、当然ながら角度をつける必要がある。こんな感じですね。

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あえて手作業でやるなら、ジグソーでたとえば30度ごとに角度を変えて切る、かな?でも面倒くさすぎ、やりたくないです。ジグソーは精度の出ない工具でもありますし。で、実際やったのは、コンパネ12ミリを3ミリピッチ4段に加工して、擬似的に角度のついた断面を表現しました。我流2.5Dデータ作りです。

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想像していただけるでしょうか、それほど簡単ではありませんでした。上下で角度が反転するので表裏2種類、さらに左右もそれぞれ作るのに、何度も失敗して一日以上かかりました。…一日くらいで何を大げさに、と思われましょうが、モノを作ってナンボの世界、PCの前に座って一日苦しんだだけでした、では日当も請求できないのです(ウソです。請求はします)。納期(積み込み)まで後○日、の中の一日なのです。

 

結果…できました。パーツ設計一日強、CNC作業半日、組み立て一日、計三日でできました。昔ならまずできません、他を当たって下さい。という筈のものが、三日で出来てしまいました。CNCルータすごい!!…とはいえ、今ラボのCNCで、type3使って作る自信無いです。

 

さてもう一品、こちら2D図面だけで。

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中央台形部が、天伏せ、平面です。左右はそれぞれの側から見た立面。総ワイド15メーターの、壁面がH2600まで立ち上がり、外R400でH3000の天井になり、かつ図のごとくその天井に角Rの平行四辺形と三角形の開口が空き、アールで前面に降りてきて空中で止まる、凝ってます。OpenSCADで描こうと挑戦しましたが、挫けました。2D図は元図面から製作用に起こしたもので、平面と立面が同時に描いてあるのは、私だけが解ればよい製作図なので補助線等含みこう描いています。実作用には、レイヤ分けしてさらにいっぱい線が引いてあります。もう今見ても何を考えて描いていたのかさっぱり解りません。あと、大物の場合トラックに乗るサイズというのが当然あって、しかるべき分割線を実線で入れています。実作の場合、本当にここで割ってあってるの?という不安のつきまとう分割線です。

 

これでアールの斜め切りを階段状に加工する技を覚えて、そして先ほどのが2作目です。納期の同じ大小二品、いくらCNCルータを入れたからって、だからできるはずだと?と言いたい、でもできたから自慢したい二品でした。

 

当時使っていたCNCルータですが、こんなやつです。

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導入したのは4年前ですが、すごい中古です。FANUCの制御版のついた、平安と言う機械メーカーのCNCです。どれくらい中古かと言うと、データサイズがMで表示されます。メガバイト、ではなく、メーターです。データ入力にパンチングテープを使っていた、そのテープ長です。8インチくらいのモノクロCRT(320*240とかなかんじ)に、Gコードはそのまま表示されて、動いてました。制御盤の入力はテンキーだけで、それでGコード打ち込めるようになっているんです。電話帳(死語?)のようにぶあつい取り説が何冊も有って…実際には、markIIというCAD_CAMソフトから作ったGコードをLAN-シリアル変換して送っていたんですが、なんていうか…専用機を、ソフトでムリから動かすわけで、もうあちこちすごいのかすごくないのか…まあでも、ラボのwoodpeckerとtype3よりは信頼性あったな。

 

まだいくつかご紹介したいものもありますが、今回はこの辺で。書いてて思ったんですが、どうも私は、2Dの図面から3Dの実作に起こすと言う、作業をときどき、仕事として楽しんでやれているようです。

【番頭リレーブログ#3】カスタマイズのためのプラットフォームづくり

2016.06.24

ファブラボ北加賀屋番頭のかしわぎです。
ラボでは主にビルドケットというけん玉を作っています。
「青春あるでひど」という科学のポッドキャストを10年くらい毎週更新していたりもします。

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けん玉は日本生まれの伝統玩具です。
学校などでも知育玩具として使われるので、ほとんどの日本人は遊んだことがあると思います。
2010年ごろからアメリカでも大流行し、逆輸入もあいまって日本でも人気が再燃しています。
けん玉が現在の形になったのは、およそ100年前の大正期、広島県呉市。
このとき、けん一本、皿三つになったようです。

 

さて、この100年の歴史を持つけん玉の形。
完成していると思いますか?
もう変える余地がないと思いますか?

 

私はそうは思いませんでした。
玉をけんにさす、とめけんという技があります。
十人いたら、一人か二人くらいしかできないでしょう。

 

十人のうち五人、とめけんができるけん玉を作ることはできないか。
十人全員、とめけんができるけん玉を作ることはできないか。

 

「そんなの作ったら、けん玉がおもしろくなくなってしまう。」

 

はたしてそうでしょうか。
私はそうは思いません。
もっと難しい技に挑戦する、そういう遊びにシフトするんだと思います。

 

道具の進化は遊びのステージを変える。
けん玉を自分の思うままに作り変えられるものにしたい。
私にとっての「パーソナル・ファブリケーション」 (個人的なものづくり、多品種少量生産型デザイン)はここがスタートラインでした。

 

ネット検索でファブラボを発見し、私の作りたかったものは現実の形になりました。
ビルドケットは、レーザーカッターでMDF板を切断して作ります。
設計図は平面なので、作図もかなり簡単です。
これからは、どうやってみんなにカスタマイズしてもらうかを考えていきたいと思っています。

Fabble ビルドケット (Buildoquet)

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【番頭リレーブログ#2】ものづくり-ことづくり-ものがたりづくり

2016.06.17

FABLAB北加賀屋の番頭の井上です。
番頭歴は2年目 色々 ものづくり ・ ことづくりをしてきました。

これまでしてきたことの一部を書き連ねようと思います。

 

●デジタル民族楽器ワークショップ

Digital Folk Instrument WorkShop from Tomohiro Inoue on Vimeo.

 

2015年6月7日にFABLAB北加賀屋において FABNIGHT#11 ”科学技術と民族楽器の融合” と題して、デジタル民族楽器をつくるワークショップを開催しました。

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民族楽器を鳴らす、あるDJさんに出会うことからこの物語は始まりました。民族楽器という分野を、ファブラボやメイカームーブメントの側から考えてみる。昔は、民族楽器を つくる人 と 演奏者 は近しいものでした。 いまは、ショップにいけばなんでも買うことができるようになりました。
大量生産によるつくり方のブラックボックス化が、二者を分断することにつながりました。それは楽器の自由度を制限し、ひいては 音楽の豊かさ を奪う行為になっているのではないかと考えました。

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3Dプリンタなどのデジタルファブリケーションはものづくりのハードルをさげました。
現代のツールである3Dプリンタで、現代の民族楽器をつくる。そのデータがネットの波にのって、まただれかつくる人がでてきて、その地方独自のデザインに改変されていったら、現代の民族楽器になるのかもしれません。

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実際の演奏者との対話を通して、プロダクトを完成させました。
その後、ただつくったものをPRするだけではなくて、それをつくることができ、演奏することができ、楽しむことのできるワークショップを仕掛けることで、その ものづくり は、 また違った展開をみせました。

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ひとりの創作活動が、人を巻き込みながらチームを形成することで、それがムーブメントになりました。
その活動は広がりをみせて、YouFab Global Creative Awards 2015にてファイナリストに選出されたり、PaperC(no.011)に掲載していただいたり、トークイベントにてお話しすることにつながりました。

 

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Fabble デジタル民族楽器のつくりかた

 

 

●Cutting&PaintingWorkshop

Live cutting & painting workshop from Tomohiro Inoue on Vimeo.

2016年5月には、WHITE HOUSE にて Cutting&PaintingWorkshop を開催しました。
海の家とその地域の地場産業(泉州タオル業者)をデジタルファブリケーションの力を使ってつなぐプロジェクトです。

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海の家にレーザーカッターが常駐してあれば、バスタオルや上着に模様をカットして気軽に日焼けアートが楽しめるかもしれない。
そんな発想を出会う人々に話していたら共感する人がでてきて、その人が知り合いに話し、そこでまた面白いと思う人がいて。。。と、点と点が線になって、いつのまにかプロジェクトの輪ができあがりました。
ついには、地場産業も巻き込んで、一緒に試作したりしながらワークショップに落とし込むことができました。

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ひとりでつくることから、誰かと一緒につくることにより、全く知らない景色をみることができました。
ひとり より ふたり、さんにん より よにん、プロジェクトの輪を広げていくことでムーブメントを起こすことができます。

一緒に おもしろいこと しましょう!

【番頭リレーブログ#1】失敗しながらのモノ作り

2016.06.10

Fablab北加賀屋番頭のイトウです。
Labでは12面体スピーカや、CNCフライス盤コントロールボックスをせっせと作っては自宅の居住スペースを狭くしています。
えんや(演磁日亜長屋)ではmbedを担当しています。

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Labに行っても、仕事でも常にCADで図面ばかり描いていて飽きないのかと能く言われていますが、全く飽きません。私の中では全く別物で欲しいものを想像しながら思いながら描くので、楽しくて仕方がないのです。
何より即出力することができる設備がLabにはあるので、今度はあれ作ろうと日々思いながらアイディアノートに書き加えています。
このノートですが、もう何年もオキナ株式会社のプロジェクトノートに赤のサインペンで描くことにしています。
アイディアはノートの片側(右)を使うにしています、もう片側(左)は作り始めた時に使うからです。
以前は黒色の鉛筆でしていましたが、たまたま筆記具が赤色のサインペンしかなく使い始めたのがきっかけでしたが、思いのほか頭で考えている事が直接描ける様な感覚が気に入って現在に至っています。
どうも、人間の目が赤色に対する感度が高いそうなのでそれが影響しているのかもしれません。
怪しくて奇想天外な変なモノが書き連ねてあってとても恥ずかしくて、とてもお見せはできませんが…。

 

Labの機材は時間貸しではありませんが、優先的に使用するために予約できるコマ数が決まっています。
加工データーをある程度用意していかないと、慌ててしまうので用意していくのが常なのですが、大体用意できるのは行く前夜になってしまいます。
いざ加工を始めると不具合が発生します。
一例としてLabで一番大きな機材のWood Packerの場合
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私の確認不足で暴走(?)してしまいました。
CAM上のシミュレーションでも表面化しない不具合ですがこれに関しては、対処方法を確立しているので今では事前に対応できています。
失敗していますが、自分で使うものですし何より仕事と違って結果に対し評価を気にする必要がないので、ガンガン作って完成させる!勢いは大事にスタート前の確認作業は倍にしています。

結果よりも、苦い思いを繰り返したプロセスを大事にしたいと考えます。
Labメンバーと情報のShareをすることでLearn・Make・Shareのサイクルがスタートするのだと思います。
聞けば教えてくれますが、そこはgive and takeが基本ということを忘れてはいけないですし、教えてもらった情報はその方が努力した結果なのだから。
お互いに成長できるようにしましょう。